仕事を辞めると上司に伝えた時に帰ってきた言葉は「気づいてあげられなくてごめんね。」
という言葉だった。どうしてその言葉がしっくりこなかったのか、今になって分かったような気がした。洋服を前後ろ逆に着てしまった時のような(自分でも驚くが、実際よくある)、なんとなくきまりの悪いような心地がしたのだ。
あれは「気づかなかった」ではなく、「気づかないようにしていた」からだと、ふと思った。
人は誰でも自分のために生きている。食べることも、学ぶことも、働くことも、その全ては自分のために。だから、それがいいとか悪いとかではなく、ただ今になって思ったのだ。あの時の言葉は、一見こちら側に向けられた言葉のように思うが、それは自分に向けられた言葉だったのだと。