曇りの夜は暖かい

兎にも角にも朝が来たら起きなければいけない。

本当の愛なんてまだ知らないけれど

冬から春に変わる時、冷たい風の中にほん少しの暖かさを感じる。

 

2週間ほど、会社を休んだ。というのも、また持病の治療が必要になったからであって、決して自由に遊んでいたわけではない。

休みに入る前、同僚の女性に治療への不安を少しだけこぼした。

治療というと大抵は、治ることを前提としているのだろう。けれども人生において治療という手術は何度もしているし、入院だけでいえば両手で数え切れないほどになっている。正直、治るというのが私にはよく分からない。治療をすれば、また次の治療がやってくる。その繰り返しなのだ。

いつもへらへらと笑っている私の元気がないと、同僚の女性と次に会った時にはささやかなプレゼントを持ってきてくれた。

プレゼントと一緒に入っていた小さな長方形のカードには、「入院中の苦しみが1ミリでもなくなりますように」と書かれていた。

初めてだった。こんなにもじんわりと温かさが広がるような言葉をもらったのは。

 

治療はとりあえず医学的にはうまくいったらしい。

ただふつうに生きていくためには、毎年高額な治療費を払いながら、どうしてこんなにも苦しみを負わなければならないのだろう。そんなことを考えてしまいそうにもなるが、すぐにそんなことを考えるのはやめるようにしている。

この世は考えても仕方のないことで溢れているからだ。

 

今日、職場の男性が「明日は昼と夜が同じ長さになる日だよ」と教えてくれた。

もう春は来ているというのにまだ朝と夜は肌寒い。けれどももう春は来ているのだ。