曇りの夜は暖かい

兎にも角にも朝が来たら起きなければいけない。

どこにでも行けるのに

今週のお題「行きたい国・行った国」

 

特別理由はないが、いままで海外へ行ったことがない。もしかしたらこれからどこかの国へ旅するかもしれないし、どこかの国に住むかもしれない。しかし今のところその予定はない。本屋に行けば旅行雑誌を立ち読みすることもあるが、思えばそれを買ったことはないし、海外旅行の計画を立てようとしたこともない。高校時代、唯一の友人は海外へ飛び立っていったが、私は1人教室にいた。そのことに対して、特段自分も海外へ行きたいと思うこともなく、結局どこへも行かなかった。

海外へ行きたくないわけではない。何十カ国も旅をしたというバックパッカーたちが、あの国のあそこの料理は良かったとか、あの国はやっぱり合わなかったとか、そういう話をしているのを羨ましく思ったこともある。その時は全く話に入ることができず、完全に蚊帳の外といった感じだった。

ただ、そんな私にもずっと憧れている国が1つだけある。

小説家である小川洋子さんが書いた「凍りついた香り」の舞台、プラハだ。

夕暮れ時に石畳の道を照らす街灯の光、教会から流れる弦楽器の音色、美しい外壁の図書館。その小説の中の街は、何もかもが美しく想像の中だけで恍惚としてしまった。

確かあれは20歳の頃、病院のベッドの上で読んだのだ。そのせいもあってか否か、初めて小説を読んで涙した。とにかく美しい場所なのだということだけが印象づいている。真っ白な冷たい壁に囲まれた固いベッドの上で、もしいつか行くとしたらプラハだろうと想像を膨らませていた。

ただどこにでも行ける今、このまま美しい想像の世界だけで留めておくのもいいのかもしれないとも思うのだ。しかしそれはまだ、分からない。