雪が雨に変わる。轍(わだち)に雨が跳ね返る。跳ね返った雨がライトで照らされる。雨はやがて雲となり、また雨となる。
車で1時間半かけて大学病院へ通っている。退院してから3週間、治療後初めての外来受診である。今回の治療は上手くいったのだが、いづれまたその時は訪れるということを治療が終わる度に思い知る。それはすぐにではないが、いつか必ず訪れるだろう。けれど、毎日毎日その日が来ないことをただ願う。
予約時間の20分以上が過ぎ、ようやくひとり前の人が診察室から出てきた。
「もう心がぼろぼろになっちゃうなあ。」
男性が女性の肩を抱きながら、そう声をかけていた。
不謹慎だろうか。ここに来ている人はみな、当たり前だが全員が何かしらの病を持っている。そう思うと心が安らかになるのだった。
街では、社会では独りだが、ここに来ればみな同じなのだということが目に見えて分かる。それは、私をこれまで何度も何度も救ってきた。
春が来たら、春が来たらと考えると気持ちが軽くなる。
春が来たら、春が来たら何をしようか。明日は、まだ明日が来ない今日、夢見るから待ち遠しい。
冬はいつも少しだけ寂しい。これまで何度も主治医が変わってきた。2年が経ち、4月から別なところへ移動するらしい。さよならをする時は、いつも少しだけ、いやかなり寂しい。
春が来たら、そう思うと心が踊って眠れない。