曇りの夜は暖かい

兎にも角にも朝が来たら起きなければいけない。

ごめんねゴディバ

スーパーやコンビニにお洒落なパッケージがぎゅうぎゅうに並べられ始めると、ああそうか、バレンタインデーかと思い出す。

1月、母とアウトレットストアに行った時のこと。母は1年前のバレンタインデーに販売されたゴディバチョコレートをおおよそ半額の値段で買った。「今年はこれでいいか。いいよね。」

となぜか私に許可をとり、「はい、バレンタインデー。」

と父に渡していた。バレンタインデー1ヶ月前の話である。

 

ゴディバチョコレートを見ると思い出すことがある。

18の頃、密かに惹かれていた人とひょんなことから2人で会うことになったのだ。デートと言っていいものなか、ほとんど私にとってそれは初めてのデートだった。完全に浮かれていたし、ひらひらの花がらのスカートなんて履いていた。待ち合わせ場所で、5分、10分、15分、40分。彼は来ない。待つ女がいい女なのか。アルバイトのシフトが急に変更されたらしい。それが分かったときには1時間くらいは経過していたのではないかと思う。

彼は来るなり紙袋を手渡してきた。ゴディバチョコレートだった。

彼の精一杯のお詫びだった。花より団子、男子(だんご)より団子。一瞬で待っていたことなどどうでもよくなった。

ここから淡い話が始まると思っている人は甘い。私にそんな淡い話があるはずない。

彼は究極のナルシストだということがその後分かり、自然と会わなくなっていった。

それからまだあの時のゴディバチョコレートよりも美味しいゴディバチョコレートは食べたことがない。