曇りの夜は暖かい

兎にも角にも朝が来たら起きなければいけない。

あ、秋。

街路樹のもみじが紅葉しているのを見て、そういえば秋だったのだと思い出す。秋は何も言わずに通り過ぎる。気がつけば秋を追い越すように冬が来て、遠慮なく居座るのだ。

先週末、通院している大学病院へ行った。まだ大丈夫だという気持ちと、疑う気持ちとで半々だった。定期的に治療が必要で、同じ治療だけで数えれば次で5回目となる。今年はすでに数回熱を出していたので、案の定といえばそうなのだが、自分のこととなると案外鈍感なのだ。

「今すぐにではないけれど、年度内にはね。した方がいいです、入院。」

予約時間よりも1時間以上過ぎていた診察で、30分くらいかけて丁寧に説明をされた。こんなにも丁寧に説明をされると、数時間前まで軽視していた現実の事の重大さを否が応でも突きつけられる。

外来が終わる時間が過ぎていたのか、診察室を出ると廊下の電気は消されていた。薬局が閉まる時間までは10分を切っていた。紙袋に詰められた薬は実際よりもずっと多く見え、採血管2本分の血を取られた左腕はなんとなく重く痛みさえ感じるのだった。

あと何度同じ光景を見るのだろう。あと何度この治療が繰り返されるのだろう。そう思うと途方も無いのだが、この世は考えても仕方ないことだらけで、ただ、風の冷たさを感じること、週明けは仕事だということ、夕飯は何を食べようか考えること、ただそれだけを感じながら病院をあとにした。