曇りの夜は暖かい

兎にも角にも朝が来たら起きなければいけない。

人と会った日は

帰り道、今日も月はきれいだなと思う。じっと月を眺めていたいけれど、寒さは苦手なので急いで部屋に入る。

人とたくさん話した日は、帰ってから玄関でお香を焚く。檜の香りがついた線香で、香りと共に煙が部屋へと広がると、浮足立った心が平坦に戻っていく。そんな気がするのだ。気持ちをリセットさせる合図のようなものは、いくつももっていたい。

 

話したいことと話したくないことが人にはあって、果たして自分はどちらが多いのだろうとふと考える。たぶん、話したくないことの方がきっとずっと多いかもしれない。曖昧な表現で語ることは聞かれたくないことであって、それを敢えて聞かずに話を聴いてくれる人の優しさがなんと優しいか。聞くということを自分のためではなく相手のためにすること、そんなヒトの優しさに触れた時、たまらくほっとする。

 

今日も少しだけ暖めた部屋で、ほんの少しだけ煙たい檜の香りに包まれながら眠りにつく。すべての感情を抱きしめながら。