曇りの夜は暖かい

兎にも角にも朝が来たら起きなければいけない。

ハンガーラック

灰色や緑色から次第に派手なピンクやオレンジが増えていくハンガーラックの洋服を眺めていると、それは唐突に訪れた。

一体誰のためにこんなにおしゃれに着飾っているのだろう。それは無論自分のため以外に他ならないのだが、本当にそれは自分の好みが反映されたものなのか、よく分からなくなってくる。誰かや何かに植え付けられたイメージの中で生きているのではないか。そう思うと、どうにも厭になってくる。

いっそのことすべてを捨ててしまいたい衝動にかられる。それですべてなかったことにしてしまえるのなら。

 

2年前、何もかもいらないと思い立って部屋のあらゆるものを捨てたとき、残ったのはこの世に在るものへの執着だった。

人はこの世への執着さえ捨てた時、生きていけなくなるのではないか。他人から見ればただのガラクタや、くだらない一瞬の事象だとしても、それらを手放せば、執着ともいえる心の支えをなくすことにもなるのだろうか。

 

いつの日か、まだティーンエージャーのころ、「きれいに生きていけたらいいのに」と友人になかば冗談で言った。

「そんななのできるわけないじゃない。ずっときれいになんて生きていけるわけない。」とやや怒ったような口調で真面目に返されたので、それ以上なにも何も話せなくなってしまった。自分でもその時何が言いたかったのか、今でもそれはよく分からない。