曇りの夜は暖かい

兎にも角にも朝が来たら起きなければいけない。

コンクリート

サーモンピンクとオレンジとブルーが混ざった空はもっとも好きな夕焼けの色で、水の上に絵の具を垂らし、ふーっと息を吹きかけたような模様をしていた。

今の部屋は4階にある。エレベーターはないのでコンクリートの階段を登っていくのだが、そこから見る夕焼けは格別に感じる。空に少しだけ近づくからだろうか。いや、コンクリートの階段の重さと固さが、微妙なニュアンスを出しているに違いない。そう思っている。コンクリート。なんだか言葉の響きも好きなのだ。

 

綺麗なものだけを見て生きていけたらいいのに。いつの日にかそう思った。

ただ、それだけではどこか不十分で不満足なのだろう。

自分の痛みには敏感で他者の痛みには鈍感なこの世界で、ほんの些細な綺麗なものや出来事に1mmでも触れられたなら、それだけですべてが癒やされるのだから。