曇りの夜は暖かい

兎にも角にも朝が来たら起きなければいけない。

歯医者に行くタイミングは難しい

歯医者に行こうと思い始めて、1年が経った。歯医者に行くタイミングが分からない。というより、なるべくなら行きたくないと思っている。しかし、もし虫歯が自分の知らないうちに進んでいたら怖いし、その時の治療の痛みのことを想像すると、行かなくてはいけないと思うのだ。

 

2年前、10年以上通院している歯列矯正の歯科医院に行った際、虫歯があると指摘された。

歯医者は歯医者でも、私が通っている歯科医院は歯列矯正が専門で、虫歯治療はやっていないらしい。「歯医者行きました?」

少し強めに聞かれた。指摘されるのは2回目で、1回目に指摘された時に歯医者へ行っていなかったのだ。できることなら行きたくない。

「歯医者、どこでもいいので、行ってくださいね。」

何度か念押しされ、いよいよ怖くなってきた私は近くの歯医者へ行き、治療をしてもらった。

 

虫歯は自分で思っていたよりも進んでいた。

「次は定期検診に来てください。」

その時、これからは毎年歯の定期検診に行こう、そう思ったのだ。

 

しかしそれから1年が経ち、歯列矯正にさえ行っていない。歯列矯正はもうほとんど終わっていて、アフターフォローのような形で様子を見ているだけなので、あまり行く気がしないのだ。「ここの歯の神経はもしかしたら死んでいるかもしれないので、後から痛くなるかもしれません。」

虫歯の治療をしてもらった歯科医にそう言われていた。

定期検診のメールがスマートフォンに届いていたが、引っ越しをしたこともあり、行くタイミングを逃していた。他の歯科医院に行けばいいのだが、結局どこの歯科医院へも行かずに月日は流れた。

 

年が明けて、持病の入院治療を予定していた1週間前、歯の痛みを強く感じた。

歯の痛みというよりは、神経がしびれるような痛みだった。すぐにその日のうちに実家近くに新しく開院した歯科医院へ行った。しびれは唇まで進んできた。これは虫歯が進んでいるに違いない。覚悟した。

 

「ストレスかけ過ぎてないかなあ。ストレスもねえ、まあほどほどにね。虫歯はないと思うよ。」

レントゲン写真を見せてもらいながら言われたことは、噛み締めすぎていることにより痛みが出たのだろうということだった。舌にはびっしり歯の跡が付いていた。

まさか、ここでもストレスと言われるとは。拍子抜けしたと同時に、治療によるあの痛みを感じなくてすむのだと思い、ほっとした。学生時代、強いストレスを感じ片耳が低音だけ聞こえなくなったことがある。今は治ったのだが、その時も耳鼻科で同じようなことを言われたのだ。

治療のために今は仕事を辞めているといえど、無職の人間が歯科医院で歯の痛みの原因がストレスだと言われていると思うと滑稽だった。一体なんのストレスがあるというのだろう。

「ストレスかけ過ぎないようにね。」

そう念押しされ診察室を後にした。

 

ストレスはある程度必要なものではあるが、強すぎると体のどこかに支障が出てくる。弱すぎても強すぎてもいけない。ストレスは風船のように膨らんだりしぼんだりしている。破裂しなければまあいいか、会計を待っている間そんなことを考えていた。